理研で50年以上ずっと農薬の研究を続ける有本さん!
SaFE農薬の開発秘話をシリーズでお届けしていきます。
- Profile
有本 裕 ARIMOTO Yutaka, Ph.D.
理研 名誉研究員 (Sharing バトンゾーン; 有本特別研究室 2010年4月 – 2020年3月)
有本さんが理研に入所したのは1970年のことです。入所してからずっと、農薬の研究開発に取り組んできました。
安全・安心な食糧を作るためには、どうやって農薬を作ればよいのだろうか―この答えを探し続けた有本さんは1つの答えにたどり着きます。それが「長年食べ続けてこられたものを使って農薬を作る」というものです。
長年食べ続けてこられたものを農薬として使うという新しい考え方を「Safe and Friendly to Environment; SaFE(セーフ)」と名づけ、そのコンセプトに基づく農薬を「SaFE農薬」と呼んで開発を続けてきました。
- SaFE農薬についてはインタビュー記事もご覧ください。
SaFE農薬は今日までに7つ、農薬として世に送り出されました。
SaFE農薬第1号の「カリグリーン」は1993年に農薬登録されました。発売から25年以上経った現在も使われ、日本だけではなく、北米、南米、台湾、韓国、中近東と広く、長きに渡って利用されています。有本さんはその後も農薬の開発をずっと行い、最近では2019年にコナジラミ用忌避剤「ベミデタッチ®(グリセリン酢酸脂肪酸エステル乳剤)」が発売されました。これらの長年の業績の結果、有本さんは様々な賞も受賞されています。
直近では、2020年10月9日に理研産業連携大賞を受賞されました。
長年の研究成果の社会実装・普及促進に多大なる貢献を果たした功績が表彰されました。
新しい農薬として世に送り出すまでには、10年以上かかることもあるくらい、とても長い時間がかかります。
有本さんもSaFE農薬の開発に当たっては、薬害の発生や研究会の解散による開発の中止、連携企業の撤退、など何度も壁にぶち当たりました。
しかし「この農薬を多くの人に実際に使ってもらいたい!」という強い覚悟を胸に、50年以上走り続け、その度に壁を乗り越えてきました。
壁を乗り越えるには、人との縁、自然から学んだことなど、様々な出会いがあったといいます。
この「SaFE農薬開発秘話」の連載では、有本さんの農薬開発ヒストリーをご紹介していきます。長年の研究生活、その中での出会いや思いをお届けしていく予定です。これから始まるシリーズをお楽しみに!