自由な発想で新しい可能性を見えないものを捉える「中赤外レーザー」

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株式会社オキサイドの提案で設置した「中赤外レーザー光源研究開発チーム」では中赤外と呼ばれる波長を持ったレーザー光源に関する研究開発に取り組んでいます。
チームリーダーの今井信一さんに中赤外レーザーの持つ可能性についてお話をききました

今井チームリーダー

– プロフィール Profile –

今井 信一 IMAI Shinichi, Ph.D.
  株式会社オキサイド
兼 理研BZP 中赤外レーザー光源研究開発チーム チームリーダー



波長が変わると世界が違って見える

─ チーム名にもある「中赤外」は耳慣れない言葉なのですが、どのようなものですか?

中赤外というのは、簡単にいうと赤外線の一種です。
赤外線はリモコンなど身近な機器にも使われていますから知っている方も多いと思いますが、中赤外というのは一般に使われる赤外線よりもさらに長い波長のものです。数値でいうと2ミクロンから10ミクロンの辺りです。寒くなると遠赤外線ヒーターを使われる方もいると思いますが、遠赤外といっても大体は3ミクロンなので実は中赤外なんです。
ですから、身近に使っている赤外線よりも長い波長のものが中赤外だとイメージしてもらえれば大丈夫です。


─ その波長が変わるとどうなるのですか?

波長が変わると世界が違って見える、ということですね。

例えば、人間の目ではモンシロチョウのオスとメスは同じ色に見えます。しかしモンシロチョウは人間の目には見えない紫外線を捉えられるので、モンシロチョウ自身はオスとメスはそれぞれ違う色に見えると言われています。
このように波長が違うとそこには私たちが認識している世界とは別の世界が広がっています。

私たちは中赤外の波長を持つレーザーを照射する機器の研究開発を進め、これまで捕らえられなかった物質の動きを捉えられるようにしたいと考えています。

─ 中赤外によって見える世界というのは、どういうものになるのでしょうか。

赤外線を使って温度を可視化するサーモグラフィというのがありますよね。私たちが普通に見るだけでは体温が高い人と体温が低い人を見分けることができませんが、サーモグラフィを使えばすぐに区別できます。
中赤外の2〜10ミクロンという波長の範囲は多くの分子の振動に合うので、波長を変えることで別の変化を捉えることができると考えています。

透明というのは向こう側が見えることですけど、人間の目で見える範囲では透明な板でも中赤外で見れば透明な板でないということもあります。その逆に不透明な板が透明に見えることもあって、中赤外でしか見えない世界があります。

─ 今まで認識できなかった新しい姿が見えるようになるということですね。ところでレーザーというのは私たちの身近な機器で出てくる光よりも強い光だと理解していますが、レーザーにする理由は何ですか?

レーザーだと単純に見える・見えないだけでなく、もう一歩進んだこともできるようになります。レーザーには制御性が良いという特徴があって、狙った方向に出せる、出したいときに出せる、といったことが可能です。
また、レーザーですからそこそこの力を持たせられるので、自動車に搭載するセンサーなど日常生活の場でも活用できると考えています。


─ なるほど。レーザーにすることで応用範囲が広がるのですね。でも日常生活の場で使うのは危険な印象もあるのですが…。

危ないように思われるでしょうが、中赤外にはアイセーフ(目を防ぐ)という安全規格のクラス1に分類される波長域もあって、その範囲で適切なレベルに抑えて運用すれば使うことができます。
使える場所が広がれば可能性も増えますから、一緒に応用を進めたいと手を挙げてくれる人達が出てくると嬉しいですね。

今井チームリーダー
─ 研究開発されている中赤外レーザーが実用化されると、どれくらいのサイズの機器になりそうでしょうか?

だいぶ小型化できる見通しで、A4サイズからA3サイズくらいの装置になりそうです。プロジェクターと同じようなサイズ感を想像してもらえるといいですかね。

中赤外レーザーは一般の方が購入して使う機器というより、産業やインフラなど生活を支える部分に貢献できると考えています。例えばですが天然ガスなどを送る長いパイプラインでガス漏れが発生したとしても遠くから検知するといったことも応用の一つになるでしょう。


─ いろいろな可能性を秘めていますね。

中赤外レーザーの波長を自由に変える技術もあることも強みです。
2ミクロンを基本波とし、理研の波長変換技術を使ってそこから長い波長を作れます。「欲しい波長域はこれ」と言われれば、そのリクエストに応じて中赤外レーザー機器を作ることができます。

レーザーを使って何か開発したいものがあっても普通はレーザーの波長が変えられないので、それに合う条件の材料や機器を用意して進めなければいけない制約があります。私たちの中赤外レーザーの技術ではその問題を解消していますので、ユーザーの自由な発想に基づいて開発を進められます。


─ 中赤外レーザーは使う側のアイデアで可能性が広がるということでしょうか。

はい、その通りです。開発中の中赤外光源を使ってみたい方がいれば、こちらのお問い合わせ先からご連絡ください。

皆さん、見えないものが見える世界で新しいことを一緒にしましょう!

今井チームリーダー

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