創薬の初期段階では多数の候補化合物が合成されますが、適切な体内動態・有効性・安全性を有する医薬品として市場に出るものは極僅かです。また、臨床試験は高額の費用を要することから、候補化合物を合理的に選択・評価するための統合的創薬支援システムの構築が必要です。杉山特別研究室では、多様なin vitro試験により得られたパラメータを組み入れた数理モデルを構築し、個人差によるばらつきまで考慮した薬物動態の経時変化を定量的にシミュレーションすることで、薬物代謝酵素・トランスポーターを介した薬物間相互作用を受けにくい医薬品、個人間変動や病態による影響が少ない医薬品および治療域の広い医薬品を予測するための方法論を確立することを目的としています。
これを達成するために、① 臨床データ(薬物間相互作用データ、非線形性データ)の生理学的薬物速度論(PBPK)モデルによる定量的解析法、② in vitro試験に基づきin vivoでの薬物動態(血中濃度推移、組織中濃度推移)を精度よく予測できる方法論(IVIVE)の確立、③ 輸送・代謝過程パラメータのばらつきを明らかにした上での仮想の臨床試験データを発生させ(モンテカルロシミュレーション)、臨床第II相試験における薬効用量の推定とバラツキの推定、第III相試験における薬効・副作用の推定とspecial population(人種、年齢、肝腎機能疾患時)における動態・薬効・副作用の中央値とバラツキの予測に関する研究を進めています。
設置期間
2012年~2020年
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