本研究においては、強相関材料のひとつであり、強磁性と強誘電性の性質を合わせ持つ材料であるマルチフェロイックス材料の新奇な応答現象に注目し、創エネルギー・省エネルギーに資する環境配慮デバイスへの応用・実用化を目指して以下の研究テーマを検討いたします。
①バルク光起電力を利用した光電変換デバイスの開発
強誘電体などの空間反転対称性の破れた結晶構造を持つ物質においては、p-n接合構造を形成しなくても光起電力を発生することが知られており、「バルク光起電力」と呼ばれております。そのメカニズムである「シフト電流」機構は、近年、理化学研究所において、その理論解釈と実験検証が急速に進展しました。
シフト電流は、エネルギー散逸がほとんどない電流であり、本機構を基にすることで太陽電池など光電変換デバイスにおける変換効率の大幅な向上に資することが期待されます。
共同研究においては、実用化を視野に入れ、原理に基づいた材料探索・設計・開発研究を推進するとともに、薄膜作製も含めたプロセス・デバイス開発を実施いたします。
②電圧駆動型・超低消費電力磁気メモリの開発
強磁性と強誘電性を併せ持つマルチフェロイックス材料は、電気磁気効果、すなわち電場による材料の磁化制御が可能であることを利用して、磁気メモリ(MRAM)への応用が期待されています。
実用上重要な特性の一つとして、強磁性と強誘電性の結合(ME結合)の強さがあり、特に室温で強いME結合を示す材料が求められています。本研究では、原理的に強いME結合が期待される「タイプII」と呼ばれるマルチフェロイックス材料の研究開発に取り組み、室温で特性発現可能な材料の探索・創成を目指し研究を推進いたします。
研究室メンバー紹介
- 岡本 敏 (チームリーダー)
- 田口 康二郎 (副チームリーダー)
- 小川 直毅 (副チームリーダー)
- 中村 優男 (上級研究員)
- LLANDRO Justin (客員研究員)
- LIU Zhehong (特別研究員)
- GIBBONS Andrew Harold (客員研究員)
- BOSSER Gurvan Henri Jean (テクニカルスタッフI)