Sharing バトンゾーンの有本特別研究室(2010年4月~2020年3月)で研究開発を進めていた薬剤の試験が令和2年1月発行の「林業薬剤等試験成績報告集」に掲載され、スギ雄花の着花抑制の効果が有効であると認められました。共同研究を進めていた理研ビタミン株式会社より、今後は農薬としての登録を目指すことも発表されました。
詳細は以下をご覧ください。
スギ雄花への着花を抑制する薬剤の有効性を確認
有本特別研究室 有本裕 特別招聘研究員(研究当時、現 名誉研究員)と理研ビタミン株式会社(本社:東京都新宿区、社長:山木一彦)の共同研究チームは、天然由来脂肪酸エステルを主成分とした薬剤にスギ雄花の着花を抑制する効果を確認しました。実用上の薬害もなく、周辺の植生への悪影響も認められなかったことから、春のスギ花粉の飛散量抑制の農薬になる可能性が期待されます。
<スギ花粉症>
スギ花粉に対して体が起こすアレルギー反応で、その症状の程度には個人差もありますが飛散するスギ花粉の量による影響も大きく、花粉の飛散量が多い年には特に症状が重くなる傾向があります。したがってスギ花粉に暴露(接触)する量が減れば花粉症の症状を低減することが期待されます。
花粉はスギの枝先にできる「雄花」の中でつくられ、毎年春に飛散する花粉の量はその前年にできた雄花の数により大きく左右されるため、スギ雄花の着花に着目して試験が行われました。
<試験概要>
試験は埼玉県寄居町の寄居林業事務所の鉢型圃場で行われました。樹齢44年のスギ立木6本を供試木として、7月から8月にかけてそれぞれの木の1/2程度に3回散布しました。また、比較するために同じ木の1/2程度に薬剤を散布しない対照区を設定しました。散布後、10月に効果の調査を行った様子を下図に示します。
結果の考察
薬剤を散布していない部分(対照区)ではほぼ全面に着花が見られ、その密度も高かったですが、薬剤を散布した部分(散布区)ではほとんど着花が見られず、本剤で処理することによって雄花着花を抑制する効果が確認できました。
本試験は、一般社団法人林業薬剤協会の委託に基づき実施されたもので、その結果は令和2年1月発行の「林業薬剤等試験成績報告集」に掲載され、当該協会の審査委員会においてスギ雄花着花抑制効果は有効と認められました。
詳細は株式会社理研ビタミンのニュースリリースをご覧ください。