2021年3月20日、理研BZP Webinarを開催いたしました。腸内細菌の研究者である辨野 義己 (BZP Sharing バトンゾーン)が「快適なネクスト・ライフのための「はじめの一歩」〜大切な腸内環境コントロール~」と題して講演しました。
当日は多くの皆さまにご参加いただき、誠にありがとうございました。
理研BZPは今後もこのようなWebinarを通じて、皆様に研究についてご紹介していく予定です。当ホームページやTwitterでご案内いたしますので、次回も是非ご参加ください。
講演当日にお答えしきれなかったご質問について講師の辨野先生からの回答と共にいくつか紹介します。
また当日の講演の様子は、後日アーカイブ配信いたします。
<研究内容に関すること>
- 腸内環境に腸の長さなど関連がありますか?
よく腸の長さが日本人と欧米人とは異なると言われてきましたが、それは間違いです。差はあまりないようですよ。基本的には腸の長さと機能には関連性はないようです。
- 大腸疾患と腸内常在菌との相関について、調査結果などはありますか?
数多くの研究報告があります。大腸疾患では正常な腸内フローラが乱れてしまう事が知られています。
- 腸脳相関のお話があり腸は第二の脳ともいわれますが、病気などで大腸を摘出した場合、腸内細菌は再生されるのでしょうか?
確かに抗生剤などを投与されると一時的に乱れて異常な腸内フローラになりますが、正常になると元の腸内フローラが形成されます。
- 高齢者が夢や目標を持つとどうして脳が活性化するのですか?
前向きに生きようとする力は免疫に大きな働きを与えます。ナチュラルキラー細胞はその前向きさにより活性が高まる事が知られています。
- 腸内細菌に男女差があるとのことですが、腸年齢や腸内環境に影響する因子も男女で異なるのでしょうか?
その通りです。年齢と性差はかなり密接に腸内フローラの構成に影響を与えるようです。特に、女性は男性より平均寿命が高くなるのも、その腸内フローラが決めているのかもしれません。
- 新型コロナ感染症状に下痢があるようですが、新型コロナウィルスと腸内環境、腸内細菌との関係でわかったことはありますか?
推測の域を出ませんが、やはり免疫が正常に働いていないとコロナ感染にも寄与するかもしれません。
<その他>
- (30名の女子大生の腸内環境コントロールの調査に使ったという)紅天使は特殊なサツマイモですか?
特殊なものではありません。
- 肉を多くとる食生活が腸内環境に良くないとのことですが、特に肉の脂肪が腸内細菌に悪影響があるのでしょうか?
脂肪が問題です。現在日本人は肉・加工肉の摂取量は45〜50キロとされていますが、やはり野菜不足が問題です、さらに運動不足も大腸がんリスクを上げる要因となっています。
- 胃酸である程度の菌は自滅し腸まで届く菌は少ないのでは?と思っていますが実際に一般的なヨーグルトなどの菌は届きますか?死菌体が届くと聞いたのですが?
市販されているヨーグルトに使われている乳酸菌のビフィズス菌は耐酸性、耐胆汁の性質もった菌株が選ばれています。特定保健用食品(トクホ)では大腸まで達することの証明が要求されています。
- ヨーグルトなど乳製品を摂取するとお腹を下すことが多いのですが、その場合は納豆など他の発酵食品でも構わないのでしょうか?食品ではなく善玉菌が含まれる整腸剤を摂り続けることはどうでしょうか?
生菌の錠剤やカプセルがおすすめですね。
- クラスターの話で、若い女性の中で、牛乳・乳製品・パンとありましたが、パンは腸内細菌に影響あるのでしょうか?また最近ではパン食が増えていますが、日本の主食のお米と腸内細菌の関係はありますでしょうか?
同一人物を使っての研究はないでしょうね。科学的なエビデンスが欲しいところです。
- 2017年のお腹ケアプロジェクトに参加させていただきました。
その結果、大便菌10.4%フェリカリバクテリウム、1%未満のビフィズス菌、主な菌群は、バクテロイデスで生活に偏りがないグループでした。この結果でさらに今気を付けるべきことは何でしょうか?
やはり、低脂肪、適たんぱく、高食物繊維がおすすめ。さらに運動ですよ。健康の源は50%は運動、40%は食物繊維の多い食材、10%が発酵食品ですね。
- 腸内細菌検査にご協力させて頂いた者です(女性)。野菜大好きで毎日たくさん食べていたのにも関わらず、結果は野菜をあまり摂取していない男性のクラスターに入っていてショックを受けました。これは、何が原因かお分かりになる範囲でご教示いただけませんか?
ストレスなどはいかがですか?これも重要なクラスターの決定打ですね。
- ピロリ菌の除菌は、腸内環境に影響しますか?
抗生剤を使うので一時的な影響があるかもしれませんが、やはりピロリ菌除去をすることにより胃がん・大腸ガン発症低下が期待できるでしょうね。
- パーキンソン病も腸からと言われていて迷走神経を切除すると軽減することもあると聞いたことがありますが、腸内細菌との関連性はいかがですか?
現在、多くの研究者がトライしている課題です。おおよその傾向が見えてくるかもしれませんね。